楽器演奏は脳や身体にいい——。よく耳にするフレーズですよね。
今回は、“全国楽器協会”が発表している情報をメインに、 お伝えしていきます。
楽器と人の不思議な関係
約10年前、ドイツで、初期人類である「ホモサピエンス」 の遺跡から、4万年前のものとみられる、 穴が開けられ加工されたマンモスの牙やハゲワシの骨が見つかりま した。
その後の研究で、それは世界最古の「フルート」 だったことが判明しました。
ほぼ同時期、同じヨーロッパに分布していた近縁の「 ネアンデルタール人」は絶滅の道を辿っていますが、 彼らの遺跡からは、楽器の存在を示す遺物は見つかっていません。
とすると、人類の「進化」「生き残り」には、 音楽と楽器が大きく関わっていたかもしれない? という可能性も否定できません。
現代の人間にとっても、音楽は「生きる力」 の1つとなるというエピソードがあります。
1914年、南極探検船が遭難してしまいました。
22か月ぶりに、乗務員全員が奇跡的な帰還を果たしました。
全員無事帰還できた理由の1つに、楽器(バンジョー) ができるメンバーがいたことで、暗い気持ちが和らぎ、 前向きに生きる大きな力になったことが挙げられています。
楽器は人間が人間らしく、健康的に生きる上で、 とても重要な役割を担っている可能性が見え隠れします。
人間は、言葉という複雑な「音」を操る唯一の生き物です。
そして「道具」を使える唯一の動物でもあります。
その人間だけの二つの能力をフルに活用するのが、「 音を操る道具=楽器」なのかも知れません。
とすると、楽器は、 人間が人間らしく生きるための特別な存在であってもおかしくはあ りません。
そんな不思議な関係を持つ、「人と楽器」ですが、最近の研究で、 楽器の演奏は「脳を活性化」し「健康寿命を延ばす」という、 嬉しい効果も期待できることがわかってきたのです。
楽器演奏は、最高の認知症予防法
「音楽療法は、認知症予防に効果があるのか」 を実験調査した結果、「確実な効果がある」と判定されました。
音楽療法の中でも、数種類の試みがありましたが、 中でも一番成績がよかったのが「楽器の演奏」でした。
それも、能動的に参加し楽器演奏をすること( 聴くだけでないということ)が、最も好成績でした。
部分的な活性化ではなく、脳の左右ともに、前頭葉、 側頭葉がかなり刺激されるところが、 脳に非常に良い効果をもたらせているそうです。
現段階では、認知症予防には「楽器の演奏」が最も効果的、 と言うことさえできるそうです。
また、音楽には、精神面・感情面での安定性や、 情動を豊かにしてくれる効果があります。
楽器で音楽を演奏することは、「知的」「情動」 両面への効果が期待できることになります。
脳と楽器の秘密とは
人間にとって「聴く」ということは、 人とコミュニケーションする時にもっとも重要な入り口。
楽器演奏は、普段の生活よりも聴覚系に意識が集中し、「 脳の聴く力」が鍛えられます。
他にも、両手(両足)、口、目など、全身を使います。
リズムを創り出す脳の領域は、 人間が計画を立てるときにつかったり、 計画的に体を動かすときにつかう箇所と非常に近いところにあり、 そこを活性化させるのです。
記憶系に加え、理解系や感情系などの脳番地も刺激されます。
さらに、演奏で感動を伝えることは、伝達系も刺激します。
つまり、「楽器の秘密」は、聴覚系にかぎらず、運動系・記憶系・ 理解系・感情系・伝達系の全てを活性化させる「 脳番地トレーニングの凄い武器」ということなのです。
だから、楽器をやっている人は「元気で、老いにくい」 のだと思います。
確かに、楽器をされていて、認知症の症状が出てきた、 という方には、私は、今のところ出逢っていません。
呼吸法で「心身の機能」は変わる?
呼吸の仕方によって、 体の機能が向上できることは昔からよく言われています。
呼吸は、「自律神経」と深い関係があります。
呼吸法を変えるだけでも、刺激される神経が異なり、 体の器官などへの影響も違う、といいます。
一般的な呼吸法には「胸式呼吸」と「腹式呼吸」 の2種類があります。
どちらが良くて、どちらが悪いというものではなく、 それぞれに特徴があります。
「胸式呼吸」と「腹式呼吸」
「胸式呼吸」は、 肋骨が広がって胸に空気が出入りするような息の仕方です。
走るなどの激しい運動のあと、 たくさん呼吸をしなくてはならないときは、 肋骨の下方だけでなく肩まで上下して呼吸します。
「腹式呼吸」は、息を吸ったときにお腹がふくらみ、 吐くとお腹がへこむような息の仕方を言います。
寝ているときは、誰でも腹式呼吸をしています。
肺活量を測るとき、沢山吐いていくと、 お腹周りが絞まる感覚があります。
このとき、お腹の中は圧がかかっていて、 横隔膜を押し上げて息を出していきます。
管楽器や歌の腹式呼吸は、このように、お腹周り、 腹部の深層筋が収縮して吐くことを指します。
複式呼吸で管楽器を演奏するメリットは、3つあります。
- 安定してたっぷり呼吸ができる、長く息がだせる
- 力まない
- メンタルもリラックス
沢山吐ける技術や息のコントロールができることは、 ロングトーンや音程、音量を調節する技術に直結します。
呼吸が安定すると、音が安定します。
腹式呼吸を行うと、副交感神経が優位になるため「 リラックス効果」が期待できます。
本来、腹式呼吸の方が楽で自然なので、リラックスしやすいです。
緊張は身体が固くなり、呼吸に不利な状態です。
だから、できるだけ身体がリラックスしている方がよいです。
腹式呼吸することで、リラックスしやすく、 息がしやすい状態になります。
楽しみながら「生涯健康脳」を
楽器を演奏すると「生涯健康脳」を維持できる。
健康に長く長く、楽器演奏を楽しむことができる。
フルートが、知らず知らず、 私たちの身体にもよい効果を与えてくれている。
フルートへのモチベーションが、一層上がっていきそうですね。